2012年2月19日日曜日

マドンナ・ヴェルデ

マドンナ・ヴェルデは海堂尊の小説。代理母出産をテーマとしたジーン・ワルツの出来事を代理母の立場から描く。患者を主人公とすることは珍しい。主人公は桜宮市に長年居住した桜宮市民であるため、ショッピングセンターの火災やボンクラボヤなど桜宮市の出来事も言及され、桜宮サーガらしくなっている。意外なところで別の作品との接点を見せる桜宮サーガの壮大な世界観には圧倒させられる。しかし、著者も最初から全ての設定を考えていた訳ではないだろう。漫画バクマンの一話完結でない一話完結のように過去の作品を読み返し、何気ない描写に新たな作品で意味を持たせることもあるはずである。過去の作品を大切にすることが成功の秘訣である。
医療問題をメインテーマとする桜宮サーガであるが、開発優先の街づくりへの批判精神も旺盛である。夢見る黄金地球儀では個性のない再開発による地方都市の疲弊を描く。極北クレイマーではリゾート開発による税金垂れ流しと医療予算削減を相関させる。マドンナ・ヴェルデでは新築マンションの耐震強度偽装や手抜き施工に言及する。マンション紛争を扱った東急不動産だまし売り裁判著者にとってニヤリとさせられる内容である。
産婦人科医の置かれている厳しい状況への問題意識は極北クレイマーと共通する。市民が出産を安全なものと勘違いしていることが非難される。これは正当であるが、少子化対策から国が出産のリスクを周知させていない傾向があるのではないか。市民の意識を批判し、医者の立場に理解を求めるだけでは解決しない。林田力
http://hayariki.net/

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