2012年1月9日月曜日

テルマエ・ロマエ4巻

古代ローマ帝国の浴場技師が現代日本にタイムスリップする作品である。作者も想定していなかったという連載長期化により、この巻では新機軸を打ち出した。現代日本に長期滞在し、温泉旅館で働くことになる。偶然にもラテン語の話せる女性と出会い、風呂に限定されていた現代日本の見聞も広がった。
主人公の繊細な日本の文物に対する率直な感嘆と一般の日本人の外見に対する蔑視のギャップが笑いを誘う。これは現代の西洋人の日本観とも共通する。
これまでの短編的な展開でも主人公が平たい顔族と呼ぶ日本人への蔑視は描かれてきた。しかし、それは未来にタイムスリップしたことを知らない主人公の無知に負うところが大きい。それ故に日本人の読者は笑い飛ばすことができた。
ところが、主人公が現代日本に長期滞在するとなると、無知な古代人の大国意識ではなく、日本の実態を踏まえた上での評価となる。短期のタイムスリップでは日本の風呂文化の良いところだけを吸収して、ローマ帝国に適用すれば良かった。これは古代ローマ市民にもウケる日本の風呂文化と日本人の民族的自尊心をくすぐるものである。
これに対して長期滞在となった、この巻では経営不振となった温泉宿の買収を目論む同業者、大切にされない老いた馬の悲しみなど現代日本で珍しくないシリアスな話題を挿入する。単純にローマにも通用する日本の風呂文化と民族的自尊心を高揚させたい向きには重たい話である。これが長編が不評な要因である。
日本の美点を評価してもらうのではなく、ありのままの評価に耐えられるか。長編シリーズが日本の読者に受け入れられるかで日本人の精神的成熟を計ることができる。日本の伝統文化の担い手でありながら熱烈なローマ帝国ファンというリアリティの乏しい新キャラクターも、自民族中心主義への嘲笑と捉えれば面白くなる。林田力
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