2011年11月23日水曜日

活断層

離島の石油備蓄基地建設反対運動に翻弄される事業者側従業員を描いた小説。東急不動産だまし売り裁判体験のある評者にとって、住民反対運動は善でデベロッパーは悪という価値基準がある。これに対して本書はデベロッパー側の人間を主人公として、反対運動側を不気味に描く。
それでも反対運動に小気味良さを覚える。村人は石油基地建設で地元は何のメリットも受けていないと主張する。工事によってダンプカーが走り回り、騒音被害が生じ、安全な生活が脅かされる。建設工事で雇用が生まれたことは、サトウキビ畑の働き手が奪われることになる。外部から来た労働者が地元商店で食品などを購入するため、物価が上がり、地元民の生活が苦しくなる。大事故でも起こしたら、銭金の問題ではない。これは原発推進派に聞かせたい言葉である。
開発のメリットとされるようなことも、デメリットとして捉えている。現実の日本社会は目先の経済的利益に釣られて乱開発を受け入れてきた。だからこそ活断層の村人の論理には輝きがある。
活断層の開発推進者は誠実に地元の声を聞こうとする人物として描かれる。これは二子玉川ライズなど現実の開発紛争とは大きく異なる。それでも開発推進者は本当の意味で地元に向き合ってはいない。その地元への配慮には独り善がりな虚しさが漂っている。林田力
http://hayariki.net/

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