2011年9月18日日曜日

二子玉川ライズ住民訴訟控訴理由書:一日校長事件

2 財務会計行為に先行する原因行為の違法性をめぐる判例について

(1) 一日校長事件最高裁判決の意義

ア 前記最高裁判決は,教育委員会の人事に関する処分の違法性と,これを前提にした地方自治体の長のなした会計上の処理が問題とされた事案であり,会計行為が違法となるのは「たといこれに先行する原因行為に違法事由が存する場合であっても,右原因行為を前提としてされた当該職員の行為自体が財務会計法規上の義務に違反する違法なものであるときに限られる」とするものである。

そしてこの判決は,上記の判示に続いて,どのような場合に当該職員の行為が違法となるかを明らかにしている。 すなわち,同判決はまず「地方教育行政の組織に関する法律」による教育委員会と地方公共団体の長の権限の配分関係を具体的に分析し,「教育行政については,原則として,これを,地方公共団体の長から独立した機関である教育委員会の固有の権限とすることにより,教育の政治的中立と教育行政の安定を図ると共に,・・財務会計上の事務に限っては,これを地方公共団体の長の権限とすることにより・・教育行政の財政的基盤の確立を期することとしたもの」と制度の趣旨を明らかにし,それによれば地方公共団体の長は,「同法に基づく独立した教育委員会の有する固有の権限内容にまで介入しうるものではな」いことから,「右処分が著しく合理性を欠きそのためこれにより予算執行の適正確保の見地から看過し得ない瑕疵の存する場合でない限り,右処分を尊重しその内容に応じた財務会計上の措置をとるべき義務があ」るとしている。従ってそのような場合でない限り,当該職員の財務会計行為が違法ということはできないこととなる。
イ 同判決は,住民訴訟における「違法性の承継」問題について「採るべき判断枠組み」を明らかにし,その後の「実務の指針」を示すことになったと評されるほどに重要なリーディングケースと位置づけられている(白藤論文甲149・648頁)。
http://hayariki.net/futako/appeal101111.html
同判決は,違法性の承継問題の核心は,当該職員が財務会計上の行為を行うに当たり,普通地方公共団体に対し,原因行為との関係でどのような行為義務(財務会計法規上の義務)を負担し,その義務を尽くしたといえるかという点にあることを示したものとされる(同648〜649頁)。そしてそのような前提に立って,教育委員会と地方自治体の長の権限配分を具体的に検討して,地方自治体の長は,教育委員会の独立性を重視して,その処分を尊重すべき義務があることから,処分に極めて重大な瑕疵がない限り,当該処分に従った財政執行をしても違法とはいえないと判示したのである。

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