2011年7月19日火曜日

幕末銃姫伝

本書は会津藩士の家に生まれた新島八重と兄・覚馬を主人公とした幕末ものの歴史小説である。作者の藤本ひとみはフランス歴史小説で名高く、幕末ものは異色である。その意味では同じくフランス歴史小説を得意とする佐藤賢一の新徴組を想起する。片や会津藩、片や庄内藩と共に佐幕派である点も共通する。
本書の覚馬は佐久間象山や勝海舟に師事し、開明的な思想の持ち主で、軍備の近代化を藩に提案するも、なかなか採用されなかった。八重は銃砲を学ぶものの、女性蔑視の風潮の中で十分な活躍の機会を得られなかった。
攘夷を叫んでいた志士が文明開化を主導するなど薩摩や長州の無節操・無定見を知るものにとって幕末ものでは佐幕派を応援したくなる。しかし、そこでは幕府主流の絶望的なほどの無能と頑迷さに直面することになる。幕臣ながら、幕府はつぶれてもいいと放言した勝海舟を一概に責めることはできなくなるほどである。本書でも新徴組でも主人公サイドは驚くほど開明的であるが、頑迷な守旧派が壁になる。新徴兵組では藩全体で軍備の近代化ができたが、本書では藩内の守旧派が大きな障害になっており、悲劇性が強い。
覚馬も八重も歴史的には明治以降の活躍が知られているが、本書は幕末維新で終わっている。そこには後の彼らの思想につながる人格形成の土台が描かれている。

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