2011年7月8日金曜日

預言者ノストラダムス

藤本ひとみの預言者ノストラダムスはタイトルにはノストラダムスとあるが、主人公はノストラダムスとカトリーヌ・ド・メディシィスの二人である。カトリーヌと言えば権謀術数に長け、フランス宮廷を操った人物である。しかし、本書では国王の摂政になる前の段階である。王妃でありながら国王の愛も権力も愛人のディアヌに奪われ、商人の家柄と蔑まれている設定である。しかし、彼女には意思の強さがあり、その点がカトリーヌの歴史的イメージと重なる。
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ノストラダムスについては神秘的な預言者よりも、カトリーヌに助言する策士的な人物として描かれる。ノストラダムス自身にも名をあげたいという野心があり、一方で異端として告発されることに怯えている存在である。あくまで当時のフランス社会に生きたノストラダムスを描いており、恐怖の大王などの預言の解釈を知りたい向きには肩透かしになるだろう。
物語の背景は宗教改革に端を発するカトリックとプロテスタントの対立である。中世的な預言者のノストラダムスと近代の幕開けとなった宗教改革が同時代であることは意外である。
フランスではカトリックを信奉する国王がプロテスタントを弾圧し、双方の信者が略奪・暴行しあう内戦状態となっていた。ブロテスタントの弾圧者とのイメージがあるカトリーヌも本書では国家の分裂に心を痛めている。現代にも通じる宗教対立の凄惨さが物語の背景になっている。野心家だったノストラダムスが身近な幸せを重視するようになった心情の変化が涼やかな読後感をもたらす。林田力

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