2011年7月18日月曜日

劇場版2作目公開中『相棒』の奥深さ(4)林田力

劇場版2作目公開中『相棒』の奥深さ(4)林田力
【PJニュース 2010年12月31日】そもそも、主権在民の民主国家において政策を提示・批判することは国民にとって当然の権利であり、義務でもある。仮に被害者家族が自衛隊派兵に賛成していたにもかかわらず、メンバーが人質として拘束された途端に武装勢力の要求に従って自衛隊撤兵に宗旨替えしたならば変節漢として非難に値する。しかし、実際は人質事件が発生したためにマスメディアが彼らの主張を大きく取り上げたに過ぎない。結論として劇場版1作目は表面的には人質肯定派に近いように見えながらも、人質肯定派の真の論理を理解していない。

劇場版1作目は人質事件の描き方としては浅く、その視点でのみ観るならば、人質肯定派にとっても人質否定派にとっても不満が生じる。しかし、劇場版1作目の主題は日本社会の非歴史性批判である。過去に追いやられたイラク人質事件の論点を、このような形で思い出すこと自体が日本社会の非歴史性への抵抗になる。改めて劇場版1作目の奥深さが感じられる。
http://www.hayariki.net/cul/aibou.htm
劇場版1作目から『劇場版』への大きな相違は相棒の交代である。亀山薫(寺脇康文)から神戸尊(及川光博)に交代した。『相棒』において亀山の存在感は大きく、新たな相棒は難しい役どころである。その方向性は亀山退場後、最初に一時的な相棒になった姉川聖子・法務省官房長補佐官(田畑智子)が示していた。

姉川は2009年1月1日放送の「相棒 元日スペシャル ノアの方舟」でゲストとして登場した。これは一人だけの特命係となった右京による最初の放送である。この放送はスペシャル番組に相応しい、どんでん返しの連続であった。

地球温暖化阻止を提唱するエコテロ集団「ジャッカロープ」によるテロによって物語は幕を開ける。しかし、テロの背後には環境問題に乗じて私腹を肥やす政官業の癒着があることが明かされる。さらに約30年前の公害問題まで絡んでくる。前半に登場したヒントが後半の推理に活かされており、長丁場ながら最初から観ていなければ楽しめない工夫を凝らしていた。

http://www.pjnews.net/news/794/20101226_8
米国同時多発テロ以降、「テロとの戦い」が錦の御旗になった感がある。テロとの戦いのためならば人権侵害も正当化できるという危険な傾向が現れている。しかし、『相棒』は極悪非道のテロリストを潰せば平和になるという類の単純な価値観に汚染されていない。一方で過去の公害問題への復讐という動機は積極的には『相棒』らしい社会派、消極的にはマンネリ化と評価が分かれるところであろう。

一時的に相棒になった姉川も「相棒=亀山」の印象が強いために好き嫌いが分かれるところである。法務省キャリアの姉川は、猪突猛進型で「人材の墓場」である特命係に押しやられた亀山とは対照的な存在である。【林田力】

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