2011年6月7日火曜日

『北芝健のニッポン防犯生活術』犯罪者の性向を踏まえた防衛策:林田力

本書(北芝健『元警視庁刑事・犯罪社会学者 北芝健のニッポン防犯生活術』河出書房、2007年12月30日発行)は元警視庁刑事で犯罪社会学者の著者が犯罪に対処する技術と思考を具体的に提示した書籍である。警察官時代に多種多様な扱った著者に相応しく、空き巣から悪徳商法、ネット犯罪まで幅広い内容を扱っている。一つのテーマが見開き2頁または4頁にまとめられており、イラストや表を多用しているため、非常に読みやすく分かりやすい。

本書の特色はテーマのカテゴライズにある。章立てを「家族に降りかかる犯罪」「子供に降りかかる犯罪」「娘が巻き込まれる犯罪」「両親に降りかかる犯罪」と想定される被害者別に分けている。その結果、「家族に降りかかる犯罪」という同じ章の中に「空き巣」や「家庭内暴力」、「交通犯罪」が入るなど、犯罪類型からすると奇妙なカテゴリー分けになっている。これは犯罪学的な分類ではなく、犯罪被害者となりうる読み手の立場を優先してまとめた結果である。読み手に有益な形で情報を提供しようとする著者の実践的なスタンスは評価できる。

また、本書は「投資詐欺」や「催眠商法」という悪徳商法にも独立した項目で説明し、防犯の観点からは軽視されがちな経済犯罪にも目を配る。東急不動産(販売代理:東急リバブル)から不利益事実(隣地建て替えなど)を説明されずに新築マンションをだまし売りされた経験のある記者にとって大いに歓迎できる。
http://www.hayariki.net/cul/kitashi.htm
市民が巻き込まれる可能性のある犯罪を網羅した本書であるが、迫力があるのは暴力団に関する記述である。刑事警察・公安警察の捜査に従事し、組織犯罪に立ち向かった著者ならではの内容である。暴力団の怖いところは一度でも介入を許してしまうと、どこまでも追い回し、骨の髄までしゃぶられることにある。そのため、著者は「そもそも暴力団とは接点を持たないこと」と主張する(23頁)。

記者も上述のマンション購入トラブルで、地上げをしていたブローカーから圧力をかけられた経験がある。記者はブローカーを相手にせず、東急不動産に対して内容証明郵便を送付してブローカーの活動の停止を要求した(林田力『東急不動産だまし売り裁判 こうして勝った』ロゴス社、2009年)。

暴力団は少しでも弱みや妥協的な姿勢を見せれば、そこから一気に入り込んでくる。毅然とした対応を求める本書の主張は記者の経験からも納得できる。犯罪者の性向まで考慮して防衛策を紹介する本書は安全な生活を送るために参考になる一冊である。

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