2011年6月10日金曜日

大河ドラマ『龍馬伝』岩崎弥太郎はどこに行く:林田力

NHK大河ドラマ『龍馬伝』は何度も小説やドラマで描かれてきた坂本龍馬(福山雅治)を岩崎弥太郎(香川照之)の目線で語らせるというユニークな試みである。史実では龍馬と弥太郎が正式に接点を持つ時期は清風亭会談以降であるが、2010年10月3日に放送された第40話「清風亭の対決」の弥太郎は精細を欠いていた。
弥太郎は序盤では迫真の演技が主役を食っていると評されるほどであった。また、新撰組に捕らわれ、寺田屋に宿泊するなど史実と関係ないところで弥太郎が出しゃばり過ぎとの批判もあった。
弥太郎を準主役として目立たせたいならば清風亭会談こそ活躍の場になる。たとえば後藤象二郎(青木崇高)を動かして土佐藩と亀山社中の連携を成功させた影の立役者を弥太郎とすることなどが考えられる。
しかし、『龍馬伝』では異なっていた。弥太郎は後藤に龍馬の存在すら報告しなかった。「さ、さ、」と龍馬の名前を口に出そうとして、言えなかったシーンは笑えるが、弥太郎は時代を進める役割は果たさなかった。後藤が龍馬の存在を知った経緯は長崎の商人の口からであった。
今回描かれた弥太郎は口とは裏腹に龍馬のことを思う「いい人」であった。弥太郎は龍馬の身を案じ、後藤との会談を求める龍馬に「薩長への橋渡しだけで良い」と答えた。また、会談中に龍馬に斬りかかろうとする上士を体張って止めようとした。微笑ましいが、活躍ではない。
代わりに清風亭会談では後藤の懐の深さが描かれた。後藤の人物の大きさを描くためには、弥太郎の活躍で清風亭会談が成功したというシナリオは邪魔である。龍馬と後藤という人物同士の率直な会談で、薩長同盟締結時にもなかった緊迫感を演出できた。その意味で今回のシナリオは大成功である。
一方で弥太郎の立ち位置は微妙である。龍馬の人間的魅力に嫉妬心を抱きながらも、引っ張られるだけで終わってしまうのか。どのような弥太郎を制作者が描くつもりであるのか目が離せない。
http://www.hayariki.net/cul/drama.htm

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