2011年6月4日土曜日

「天地人」第11回、「御館の乱」、義を貫く華姫:林田力

戦国武将・直江兼続の生涯を描くNHK大河ドラマ「天地人」第11回「御館の乱」が2009年3月15日に放送された。今回から上杉謙信の跡目をめぐり景勝(北村一輝)派と景虎(玉山鉄二)派が激突する御館の乱になる。
前回から引き続き兼続(妻夫木聡)は自己中心的である。謙信の遺言が偽りであることを知っていながら、あくまで偽りの遺言を根拠として景虎には景勝への服従を求め、景勝には家督相続の正当性を主張する。謙信が草葉の陰で悲しむとしたら、遺言を捏造してまで家督を継ごうとする景勝派の浅ましさである。
封建社会の武士にとって忠義の対象は直接の主君であって、主君の主君は主君ではなかった。この価値観に従えば上田衆にとって忠義の対象は景勝一人であり、越後上杉家が分裂しようと国力が消耗しようと関係ないことになる。それ故、上田衆が景虎を排除してでも上田長尾家の当主である景勝に家督を継がせようとすること自体は戦国時代のリアリティを追求したものである。それが彼らにとっての義になる。
もし、兼続が上田衆としての立場を徹底するならば、筋は通っている。ところが、本作品の兼続は戦争の原因となるような言動をしておきながら、内紛に心を痛めるという「いい人」を演じている。上田衆によるクーデターを進めた兼続がソフトランディングを希求すること自体がおこがましい。
天地人は「日本人の義と愛」を描くことを企画意図としているという。ところが現在の兼続には自国がアジアを侵略していたにもかかわらず、それを批判する国際社会の圧力をABCD包囲網と呼んで自国が攻撃されているかのように被害妄想を抱き、十五年戦争を自衛のための戦争と正当化した醜い日本人を連想させる。
矛盾した兼続とは対照的に好演していたのが景虎とその妻の華姫(相武紗季)である。春日山城本丸を武力で占拠した上田衆に対し、景虎が怒ることは当然である。謙信の遺言が景勝派の捏造であることを知っている視聴者から見れば、景虎はもっと怒ってもよいくらいである。
http://www.hayariki.net/tenchi.htm
先週から裏切られ続けた景虎は心が荒み、悪鬼のような形相になっていた。三国一の美男子と称されて登場していた頃とは別人のような変わりようである。その景虎が華姫の熱意によって優しさを取り戻す。悲劇の武将である景虎の心が少しは救われたようで感動的なシーンであった。封建社会の忠義が直接の主君に対するものであることを踏まえれば、兄と夫が争うという複雑な状況において迷うことなく夫についていく華姫こそ今回の放送で義を貫いた人物である。

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